遊びの原理に立つ教育

幼児教育の第一人者である森楙(もり しげる)先生が20年以上の研究に基づいて1992年に書かれた著書です。30年前の著書ですが、内容は遊びと教育を連続的にとらえ、「遊び」のもっている教育力を教育の原理に導入すべく、遊びの復権を提唱されています。


専門書ではありますが、遊びの教育的役割について、具体的にわかりやすく丁寧な文章で書かれています。そのため大変読みやすく、今問題となっているテーマについても取り扱われていますので「今年、書かれた本ですよ」と言ってもわからないくらいです。


それは、現在幼児教育において随所で聞かれる「遊びの重要性」がすでにこの30年前の書籍において指摘されているのです。例えば、遊びによって創造性が育ちますが、どのようなおもちゃであそぶことが創造性を豊かにしていくのか。そして、その遊びを育てる親の態度とは。についてなど、詳しく説明されています。


現在子育ての相談で多く寄せられるスマホ育児についても、当時の新しい遊びのメディアとして登場したファミコンについて考察されています。ファミコンをスマホに置き換えて読めば、スマホ育児の利点や問題点なども浮かび上がってきます。


最後に我々保育者に向けたメッセージもあります。

保育者の子どもに対する行動が支配的か統合的かによって、子ども達の遊び活動の発展が大きく違うことをご指摘されています。


30年前よりも我々の役割の重要度は増していると思います。

良い保育ができるように何度も読み直したい本の一冊です。 

  



◆森 楙(もり しげる、1932年6月16日 ー )

日本の幼児教育学者、教育社会学者、広島大学名誉教授。
「あそびを育てる(保育技術シリーズ)」「遊びと発達の心理学」など著書・訳書多数。


◆遊びの原理に立つ教育

遊べない子は、いじめられっ子になるという報告で衝撃を与えた著書が、遊びと教育を連続的にとらえ、「遊び」のもっている教育力を教育の原理に導入すべく、遊びの復権を提唱。「遊び失調症」を生み出してきた偏差値至上主義の教育観を根底から是正し、活力ある学校の再生をはかる道をさし示す。

「遊びの原理に立つ教育」森楙 著 黎明書房

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